評論家 宮田徹也さんによる個展の批評文

14064013_925628054215737_2805282873126906293_n評論家の宮田徹也さんが個展(2016.8.1~6@ステップスギャラリー銀座)の批評を書いてくださいました。
タイトルはズバリ『万人に対する配慮を行うこと。』です。で、できてるのか^^;
現代美術に対する私の姿勢を見てくださったようで驚き&嬉しい気持ちです。

ありがとうございました。
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金澤麻由子、ステップス2 年ぶり2 度目の個展である。前回同様、絵本『ポワン』と『てんからのおくりもの』の原画を中心とし、小品を出品した展覧会である。総数、33点である。映像作品《きみのいる家》(2016)も登場した。
よくよく考えれば、絵本の原画とはこれほどまでに大きいのであろうか。まるで現代の絵巻のような印象を受ける。一枚一枚、丁寧に描いていることが伺える。私は立ち会うことができなかったが、金澤は画廊にいて立ち会う者がいる限り、原画を前に絵本の朗読を続けたという。この真剣な姿勢こそが、金澤の魅力なのであろう。
森のようなオブジェにモニターが仕込まれている《きみのいる家》は、抽象性に帯びている点において、アニメーションと区別され映像作品に特化する。ギャラリー入り口の芳名帖前にもモニターが用意され、映
像が投影されていた。「絵が動く」アニメーションというよりも、意識が忽然と流れ続けていた印象が残る。小品は様々な技法で描かれているので、パグを主題定めて
いても、様々な変化が生じている。矩形、円形と支持体に工夫が成され、額装されているので、家庭に置き易くなっている。こういった配慮も時には必要となる。
グッズもトートバッグ、クリアファイル、ポストカード、ノート、お菓子などに展開していて、手に入りやすくなっている。当然、絵本を手に取ることもできた。
この展覧会で思うことは、金澤が自ら学んだ現代美術のあらゆる手法を駆使して、自らのイメージを具現化し、多様に拡大することに主眼が置かれていることである。
美術に興味がなくとも金澤の作品を愛する者は、自分の興味があることが実は美術なのだということを自覚する場なのかも知れない。美術、特に現代美術とは専門性に陥りがちであり、本来の性質である万人に向けられていることに対して配慮が欠落する場合があることも、私は気付かされたのであった。

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